今回は、Blenderでのモーション制作で手指を動かすためのリグを作ります。
指の関節は片手合計で30個もあるので、モーション制作の際に全てを手作業で回転させるのはとてつもない作業になってしまいます。
そのため、ある程度動きに制限がかかってもシンプルに動かせる仕組みを作っておきたいです。
今回はごく簡単なものですが、自分が使いやすいものを考えて作ってみました。
その他のリグの作り方はこちら↓
もくじ
手指の仕様
まず、手指のリグをどんなものにするかは人によって違うのかなと思います。
僕の場合、何だかんだ凝りたくなるタイプなので割と細かく動かせるようにしておくことにしました。
- 指は1本ずつ曲げ伸ばしができる
- 親指以外の指では3つの関節が連動し、親指は先端2つの関節が連動するようにする
- 親指の付け根の関節は複雑な動きが必要なので手動で動かす
- 手指の横の開閉(パーの形)は中指を基準にして人差し指・薬指・小指が一括で動かせるようにする
モーション制作時にちょっと手間はかかりそうですが、とりあえず色んなポーズが出来る造りにしておきます。
操作用のボーンを作る
まず、アーマチュアのどこかに操作用のボーンを作ります。
操作しやすい場所どこでも良いと思いますが、僕はとりあえずモデル後方の空いたところに作ってみました。
倒れるモーションを作る時にはちょっと邪魔かもしれないので移動するかもしれません…。(一般にはモデル後方で縦に(Z軸に沿って)配置している人が多いみたいです…)
今回は「5本の指をそれぞれ回転させるボーン」「左右の手それぞれの開閉用のボーン」で計12本作りました。
位置は数値で指定して分かりやすくしておきます。
また操作用のボーンは全て親子関係のないボーンにしておきます。

ボーンを並べて好きな名前を付け終わったら動かす範囲を制限するようにしておきます。制限には「Limit Location」コンストレイントを使います。
ポーズモードでボーンを1つ選択し、プロパティウインドウのボーンコンストレイントタブから「Limit Location」をつけます。
X・Z軸は固定してY軸だけ一定の範囲で動かせるようにしたかったので、以下のような値にしてみました。

全部のボーンに作るのは大変なので、コンストレイントをコピーしながら作業します。
①コピー先のボーンを選択 → ②Shiftを押しながらコピー元のボーンを選択 → ③コンストレイントのメニューの「選択にコピー」です。

指ボーンへの設定
指ボーンにコンストレイントを設定するには、まず編集モードで指のボーンロールを確認します。
指の各ボーンのローカル軸で回転させるので、ボーンが回したい軸をきちんと向いている必要があります。
まず人差し指~小指はX軸で回転させればよさそうなので、これでOKです。
斜めになっていたらトランスフォームのボーンロールを修正します。

親指は傾いているので、X軸を傾きに合わせて修正しました。
なお付け根の関節だけちょっとずれていますが、この関節はコンストレイントを使わないことにしたのでボーンロールはあまり気にしていません。

それでは回転のコンストレイントを設定していきます。
まずボーンを1つ選択してコンストレイントの「トランスフォーム変換」を付けます。


ターゲットにはそれぞれの指用に作った操作用ボーンを指定します。
またターゲットは床置きしたので「ワールド空間」に、指はローカル軸で回転させたいので「ローカル空間」にします。
「変換元」は操作用ボーンの参照情報を指定します。
今回はY軸に沿ってのスライドの動きなので「位置」にし、操作用ボーンの方で設定したY軸の動かせる範囲を最小値と最大値として指定します。
「変換先」は指のボーンの動きです。
指は曲げたいので「回転」にし、各軸の変換元をすべてYにします。
最小と最大は「操作用ボーンがそれぞれ最小と最大の時の対応する角度」なので、一番伸ばした状態と一番曲げた状態の値を(動かしやすいと思う方で)指定します。
なお僕はX軸の動きだけだと不自然な気がしたので、Y軸もほんの少し回転を入れました。
(指先が少し寄るような動き)
角度をそれぞれ調整しながら全部の指にコピーし、握るポーズができるようになればOKです!

指を開く動き
指を開く動きは1つの操作用ボーンで人差し指・薬指・小指を一括して動かすようにしました。(中指は回転の中央になるため不要です)
コンストレイントは1つのボーンに複数つけられるので、各指の付け根のボーンにそれぞれ別に「トランスフォーム変換」コンストレイントをつけます。
名前を変えられるので、分かりやすくしておくと便利かもしれません。

設定内容は指を曲げる動きとほぼ同じです。回転の軸をローカルZ軸にし、各指が外側に向くように角度を指定してパーにします。

開閉の動きと指を曲げる動きを組み合わせればいろいろな動きを作れます!

なお、親指の付け根のボーンだけは「親指を立てる」「握りこぶし」「他の指と平行に揃える」などかなり複雑な動きが必要になってくるので、僕はコンストレイントでは動かさないことにしました。
ただし、親指の付け根は手のボーンとの間で切断していることには注意です。モーションを作る際は回転だけさせて位置を動かさないようにする必要があります。
実際に動かしてみたところはこんな感じです。
このリグでは指の第三関節だけを曲げる(フレミングの左手の法則みたいな形)・指をクロスする等の複雑な動きは作れませんが、それ以外の動きだけでもまあまあ表現力はあるんじゃないかなと思います。
まとめ
使いやすく綺麗な動きに仕上げるにはちょっと手間がかかります…!
でも完成するととても便利なので頑張る価値はあります。(手の制作時に指関節を一つずつ角度チェックしながら曲げていたのは何だったんだ…)
僕は指をバラバラに曲げる形にしましたが、全部の指を一括して曲げるようにする作り方もあるようです。
作りたいポーズや自分の作業との相性で使いやすい方法が見つかると良いのかなと思います。